カテゴリー別アーカイブ: 書評

まめこ:あれも、これも、おいしい手作り生活。

あれも、これも、おいしい手作り生活。 (Sanctuary books)/サンクチュアリパプリッシング

普段何気なく買っているものを自分で手作りしたら美味しくて楽しいということをコミック形式で解説している本。

コミック形式とは言うものの内容はキチンとしておりカバーする食品は和食、洋食、調味料等々広範囲にわたる。

著者の言う手作り食品の魅力は美味しい、楽しい、安心・安全、安上がりということだ。外国、特に日本食品が手に入りにくい地域に住む身としては、手作りが唯一の手段であることが多いことも理由として加えたい。

料理する人、特にマヨネーズとか調味料を作った経験のある方は自然と食品の原材料を気にする傾向が強くなる気がする。私もこちらで原因不明の蕁麻疹を患って以来、それまで以上に食に気を使うようになり、手作りする回数が増えた。本格的に料理する人には物足りない点もあるかもしれないが、読んでいて作ってみたいなぁと思うものが沢山あった。

本書は食品を季節毎に分けて紹介している。紹介されているものはバター、きな粉、練乳、べっこう飴等非常に簡単に作れるものからカレーやウェスターソース等ある程度手間のかかるものまで色々とある。

個人的にはご飯のお共となる海苔の佃煮、なめ茸やたくあん等が嬉しかった。元々作っていたものだけどレシピを変えて作るのも楽しかった。しかし梅干しを読むのが辛かった。食べたいけどこちらには梅がないので。

片桐はいり:わたしのマトカ

わたしのマトカ (幻冬舎文庫)/幻冬舎
女優片桐はいりの初エッセイ本。

彼女が映画「かもめ食堂」のロケでフィンランドに行った時の出来事を中心に書いたもの。「マトカ」とはフィンランド語で旅という意味なので題名はわたしの旅ということとなる。

冒頭で述べている様に旅好きな彼女。ただ、この旅行がこれまでと異なるのは出張だったため彼女自身が選んだ旅先ではなく、また、準備が出来なかったため予備知識を持たずに旅先であるヘルシンキに向かったということ。

片桐はいりはそんな条件の下で行ったフィンランドにおける一か月に亘った滞在の思い出を綴っている。予備知識の無さから派生するハプニングの数々や彼女自身の好奇心や恐らくだが物怖じしない性格が要因と思われる様々な出来事。トラムへの乗車、肉にかけるベリーソース、マッサージ、クラブ体験やファームステイ等だ。

また変なこだわりや先入観を持たない方なのだと感じた。例えば食通だと自覚する人がガイドブックに載る店には行かない等ということはたまに聞く話だが彼女は必ず行くという。食事関連でも「生で魚を食べる仲間」であるフィンランド人の食生活について少し伺える。ジャガイモ、トナカイ肉や飛行機の中で食したお菓子等だ。

本書を読んでいて物凄く上手な表現をされる方だなと思った。彼女の現地フィンランド人との交流及び彼女の感受性があってこそであるが、フィンランド人のぶっきらぼうさとその裏に隠された優しさ等、そこに行ってみたいと読者に思わせる説得力が彼女の文書から溢れ出ている。特に肉にベリーソースをかけることに拘るフィンランド人の日本版としてすきやきに生卵を挙げたのは秀逸だと思った。

本当に色々な所に気が回り、また、観察される方だなとも感じた。ヘルシンキのカラスの大きさやフィンランド俳優との交流等々。

片桐はいりは「人にはおのおのの、町とのつきあい方がある」と言う。素晴らしい言葉だ。本書で著者はこの言葉を実践している様に感じた。だからこそ豊かな描写で魅力的な本が出来上がったのだと思う。


有森裕子:やめたくなったら、こう考える④

やめたくなったら、こう考える (PHP新書)/PHP研究所


有森選手の本に関する感想シリーズの最終回です(一回目二回目三回目)。

最後は有森選手が試行錯誤について語っている部分について書きたいと思う。

有森選手は好きとはいえないマラソンを長く続けてきた。その理由の一つとして試行錯誤し、改善する工夫を設ける様にしていたことを挙げている。そうすることに喜びを感じることが出来たと言う。

発見という言葉を使い、その試行錯誤について更に説明している。何故という発見、自分の体や技術、恐らく身体操作方法やパフォーマンスの向上であろう、に関する新たな発見である。

こうしたことに喜びを感じることが出来るということは、あくまでも想像であるが、有森選手が些細な変化を見逃さない感覚を持ち合わせ、更にその変化に対する質問を作り上げ探求する能力を持ち合わせていたのだと思う。

私も含め多くの人にとってこれは非常に難しいことなのではないと思う。問題を作り上げるにはある程度のレベルの身体操作能力及び理解力必須であり、また、問題作成を繰り返すということは、それ以前の質問に答えられるということが前提条件となる可能性が高いからだ。この試行錯誤の話に有森選手の非凡な才能を感じることが出来る。

同じことは比喩的な意味での壁を乗り越えることでも感じることが出来た。目的をかなえる手段は幾つもあると述べる有森選手は実際に幾つもの方法を思いついてきたのであろう。

それは勿論才能のみによるものではない。努力の結果、前回述べた根本がしっかりしていたから迷った時でも挽回出来る確信があったことにもよるであろう。

有森選手も述べる通り、好き嫌いと関係なくやらなければならない物事というのは誰にである。その際に胸を張って述べることの出来る“辞める理由”が無い場合でもそれを継続するにはどうすれば良いか。本書にはその答えとなれるヒントが沢山詰まっている。