カテゴリー別アーカイブ: 書評

谷本道哉&石井直方:ストレッチ・メソッド

5つのコツで もっと伸びる カラダが変わる ストレッチ・メソッド (カラダをつくる本シリーズ)/高橋書店

ストレッチ関連本は数多くあるがその中で私がお薦めする一冊がこの本。

著者が二人とも研究者であるためか、説明が非常に明快だ。例えばよく見かけるストレッチの一部が実際にはあまり効果が無いことを筋肉の伸びの観点から説明している。その上で改善点を紹介しているため、自分の体で具体的に筋肉の伸びが確認出来る構成となっている。

また、種目別に適したストレッチを紹介しているため、どのストレッチを行えば良いか迷うことが少なくなるであろう。

実際のストレッチの説明では写真をふんだんに使い良い例及び悪い例をしっかり説明している。そのため、大きな鏡の前で行えばかなり正しいストレッチが行えるのではないかと思う。

更にこれだけ肩こりや腰痛対策メニュー等も紹介されていることから、普段あまり運動をしない読者にも参考となる点が多いだろう。

本書で幾つか紹介されているコラムも非常に興味深く、また、説明が分かり易くトレーニングの助けとなるものが多い。

内容もしっかりしていてボリュームもある本書。出来ればDVDを付けて欲しかったがそれでもストレッチ本の中では非常に分かり易い一冊だ。

木場克己:カラダをリセット

DVD付き カラダをリセット+体幹力UPのコアトレーニング/成美堂出版

著者はFC東京や長友佑都選手への指導経験のあるトレーナー。

長友選手の活躍で体幹トレーニングは日本でもかなり有名になったのではないかと思う。本書はその体幹トレーニングに特化した一冊。

冒頭、著者は体幹トレーニングはその効果が一朝一夕では分かりにくいと述べ、そのメリット及び分かりにくいことから派生するトレーニング時の注意点を述べている。

その上で、走る、跳ぶ、蹴る、振る及び投げるの動作において体幹力の強化が如何にパフォーマンスの向上に繋がるを強調する。

肝心のトレーニングはストレッチを含めた五段階に分けられている。日常的にある程度の強度のトレーニングをしている人には上級編・プロフェッショナル編もこなせるのではないか。

ただ、体幹トレは正しい姿勢且つ正しく力を入れることが重要なので本格的に行う場合はやはり一度はトレーナーに見てもらう必要があると思う。

付録のDVDの構成は非常にシンプルだが本書で紹介されているストレッチ及び体幹トレを全て網羅している。このシンプルさが本書を真剣なトレーニング指南書として優れたものとしている気がする。本格的にトレーニングしたい人に是非お薦めしたい一冊だ。

小島寛之:世界を読みとく数学入門

世界を読みとく数学入門 日常に隠された「数」をめぐる冒険 (角川ソフィア文庫)/角川学芸出版

先日、紹介した本に続き数学関係の一冊。とはいってもこちらも一般読者を対象とした本。

冒頭、筆者が数学が大好きな一方、現在の学校数学に懸念を抱いていて数学の楽しさ、如何に数学が自然界及び我々の社会と関係しているかという知ってもらいたいという願望が如実に伝わってくる。

本書は大きく分けると整数、分数、無理数及び虚数の4つのテーマに分けられる。それらが如何に我々と関係しているか(RSA暗号や幾つかの映画を例として挙げる等)、また、時には我々の行動の制限に繋がるか等(例えば10進法の壁)を優しく説明している。

ただ、考え方の紹介や説明をするだけではなく、所々でパズルを提示し読者の参加を促し、更なる理解の深化へ繋げようと試みている。これらのパズルは中々面白い。

本書で取り上げられる概念(とは言っても大体のものはごく短くではあるが)としては黄金比、ランダムウォーク、フェルマーの最終定理、ゼータ関数等。また、ベイズの逆確率、ポワッソン分布、ガウス分布等どちらかと言えば統計学の分野に収まるも紹介されている。

また、量子コンピューターの可能性とRSAに及ぼす影響等は多くの人を魅了するのではないか。

色々と興味深い例が挙げられていて楽しめる本。個人的には素数かな。一見簡単で未だに規則が完全に解明されていない。そこに大きな魅力を感じる。